「桐花 四章」『駱駝の瘤にまたがつて』
門を出て
門を出て數步の石に
靑薄ひともと生ひぬ
こぞありしひともと薄
常なきは人の世にこそ
春たけて
春たけて去りし海どり
雪ふらばまた歸りこん
濱松に波のうねうね
虛しきか日は高しらす
蜑女の焚く
彼方にもここにもたちて
隣家に桐の花咲く
この日ごろわが庭は
丘のべに
丘のべに桐の花咲け
未だ爐もふたがでありぬ
パイプ古り主も古りぬ
世にさかる心にあらね
三好達治「桐花 四章」『駱駝の瘤にまたがつて』(S27.3刊)
門を出て
門を出て數步の石に
靑薄ひともと生ひぬ
こぞありしひともと薄
常なきは人の世にこそ
春たけて
春たけて去りし海どり
雪ふらばまた歸りこん
濱松に波のうねうね
虛しきか日は高しらす
蜑女の焚く
彼方にもここにもたちて
隣家に桐の花咲く
この日ごろわが庭は
丘のべに
丘のべに桐の花咲け
未だ爐もふたがでありぬ
パイプ古り主も古りぬ
世にさかる心にあらね
三好達治「桐花 四章」『駱駝の瘤にまたがつて』(S27.3刊)