『日光月光集』
北の國ではもう秋だあかのまんまの つゆくさの 鴉揚羽の八月は秋は夏のをはりですゆくへも知らぬ人のかずかつて砂上にありし影それらもやがて日が暮れて鴉のやうに飛びさつた去年の墓に隣して一つの夏はまた一つ憂ひの墓をたてました何というさみしい書割り…
門に客あり先生は宅に在りやと問はすかな昨日も鮒の子を賣ると窓をたたきし村人のさこそは我れをよばひたれ世はそらごとのつねなればいつかは耳にききなれてよばふにまかれうべなれどまことは感のなからめや老の眼鏡に書を讀むを先生などと推(すゐ)すらめ…