2018-01-23から1日間の記事一覧
門を出て 門を出て數步の石に靑薄ひともと生ひぬこぞありしひともと薄常なきは人の世にこそ 春たけて 春たけて去りし海どり雪ふらばまた歸りこん濱松に波のうねうね虛しきか日は高しらす 蜑女の焚く 蜑女あまの焚く煙ひとすぢ彼方にもここにもたちて隣家に桐…
日もくれぬ 日も暮れぬ己し が盞をみたせただ餘はそらごとぞ己が詩うた をみづからうたへ月やがて松にかからん 盞は 盞はちひさけれどもただたのむ夕べの友ぞおほかたはひとをたばかる世にありてせんすべしらに 爐に臥して 爐に臥して憂ひをいだく肱枕さむき…
霰うつ 霰うつ音ねにもねむるや山兎山鳩野雉のきじこの宿の主じはひとりやぶれたる夢をむすばず 沖ゆ來て 沖ゆ來て松に聲ありけたたまし軒を走りてつかのまやはらら聲たゆたま霰ゆくへをしらず わが庭の わが庭の石うつ霰松こえて海にはせいる日に三たび港に…
殘紅 憂しといとひしすゑの世のちまたもけふはこひしけれ日すがら海のこゑすなる軒端にのこる花はまれ くつわ蟲 黍の穗たかく月いでて秋は越路のくつわむしくつは蟲とてましぐらに海になくこそあはれなれ 鉦たゝき すずしき鉦をとをばかりたたきてやみぬ鉦た…
くれなゐの くれなゐの花はみな散りよき友はみなはるかなり神無月しぐれふる月こぞの座にわれはまた坐す いとはやく いとはやくひと世はすぎぬ天命を知るはこれのみくさびらを林にとると腰たゆき時雨びとはや わがうたを わがうたをののしる人ものいふがまま…
花木槿 人に面おもても見すまじきけふの心のかたくなをしかはあれどもよしとするゆふべはしろき花木槿はなはちす 村雨 こゑありて見れば村雨またありておつる日のかげ秋は巷もひそかにてただとほしつくつく法師 しぐれの雨も しぐれの雨もくれなゐに軒ばの花…