三好達治bot(全文)

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2020-04-01から1ヶ月間の記事一覧

「郊野の梅」『砂の砦』

逝くものはこゑもなくゆくささやかな流れの岸の梅の花野の川の川波たてばその花のかげもみだれてそはしばしゆらぎさざめく日暮れどき野はやがでほの昏けれどその花のもののあいろもさだめなく昏きあたりにただ一つその花のともす燈火(ともしび)――微笑 囁き…

「古松に倚る」『砂の砦』

天遠く晴れて月影白くほのかなり寂々として心を來り撲つは何我れはわが行かんと欲りしところを忘れ徘徊して古松の影に倚るわが生の日はすでに久しくあまたたび行路の轉變を見るこの心また落寞として願ふところことごとく絕つ來るものをして來るに任じ行くも…

「一葉舟」『砂の砦』

——ある一つの運命について 天に雪舞い四方(よも)に烈風のこゑをきく景や暗憺として涯(はて)なく波浪かげくろく海を傾け來る海は傾き去つて飛沫しろく潮流激し鳴る海鳥忽ち虛空より下りみな翼にしづくたれて叫び啼けりああこゑあるものかくことごとく悲泣…

「半宵記」

先日女流作家のO・Kさんが突然他界された。私は朝の新聞でそれを知つた時、同女史の――ほんの數囘私がお眼にかかつた、その時々の風采や擧止動作を次々に思ひ泛べた。友人達大勢と一緖にお宅で御馳走になつた時、銀座のどこかで行會つて簡單なお辭儀をしあ…