三好達治bot(全文)

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2017-04-01から1ヶ月間の記事一覧

「美なるかな神州」『干戈永言』

この日天靑きに風起り雲飛び雪ふる三度霰ふる三度す耳目凛烈怒濤海を囓み枯木みな鳴る昭和第二十肇國二千六百五歲々旦玆に越に假寓し身騾背にあるが如し白鷗窗を過ぎ寂寞として聲あるを聽く彼方山みな白き國土を望み步して我れ路上に彳ちまた往かんとすると…

「乾坤無韻」『干戈永言』

輕鞭一揮さへ寂寞聲あり 況や是れ大風支裂して高響君自ら聽く 年少敢爲の士已に立つ四大の外 波を踏み雲に駕し來る寇虜ただ戲影―― 昏愚骨枯れ日に頽然爐に感を作し馬齡を羞ず數々(しばしば) 噫乾坤もと韻なし嚠喨雲鶴號ぶ 三好達治「乾坤無韻」『干戈永言…

「神風隊てふ」『干戈永言』

十機ゆき十機かへらず百機ゆき百機かへらず神風隊てふ この日ゆく空のはやをら明日ゆかん伴(とも)もかへらじ神風隊てふ さきゆくはゆきてかへらずのちゆくもただにかへらじ神風隊てふ あなあたらうらわかき身をさけくだけかげもとどめず神風隊てふ 日の本…

「決戦の秋はきたれり」『干戈永言』

一すめらみくにの興廢はけふのいくさにかかりたりああこのいくさかたずんば祖宗のくにをいかにせん たて一億決戰の秋はきたれり 二すめらみくにのもののふがちしほにそめしくれなゐのなみのとたかし北海になみのとたかし南海に たて一億決戰の秋はきたれり …

「けふのこのおほみいくさに」『干戈永言』

けふのこのおほみいくさに勝たずんば亞細亞は亡ぶことあげはいかにいふとも人倫も學も技藝も産業も枯れ荒び朽ち大東亞十億の民はてしなき奈落に墮ちん敵はかの鐡の重壓カタピラの踏みゆくところ一穗の光明のたね一物の微だにあまさずすゑのすゑいやはての終…

「敵機来る」『干戈永言』

敵機來る敵機夜陰に乘じて來る敵機拂曉にまぎれてくる敵機また白晝われらの頭上を冒して來る敵機來る敵機遠く千里の外より神州の本土を侵攻し來れりわが精銳猛鷲百たびこれを擊ちて退くとも敵もまたこりずまに百たび來りさらにまた百たびもその意志をくりか…

「兵機深玄」『干戈永言』

サイパン敵手に落つ報は七月十八日十七時慘として一億が耳朶を撲ち肺腑に徹す寇虜日に勢を逞しくし南溟の要關つひに援けなく孤壘夷(たひら)ぎ火砲碎け硝藥盡き刀刃折る而もなほ守兵險に據り嵎を負ひ萬死の地寸土をだもかりそめにせずああ將士みな至尊のま…

「駆逐艦」『干戈永言』

空はまつ赤な夕燒の中を靜かにここに入つてきた驅逐艦驅逐艦が二隻港の島かげに舳(へさき)をそろへて碇泊した鋼鐡の軋るかすかな音が聞こえてくる甲板には人影がすばやく動いてゐる何か操作をつづけてゐるのだ遠い外洋から歸つてきた驅逐艦はまだ休息の「…

「旭日旗樹つ」『干戈永言』

サイパンは神州の南關旭日旗ここに翩翩と樹つ驕虜ここに蝟集し來り艦砲ここに直射し爆彈ここに雨ふれど旭日旗嚴として硝煙の間に樹つ戰艦咫尺に出没し飛機頭上を覆ひ輕舸走せ戰車驅り來り既にして敵勞われに幾倍勢に傲りて跳梁をほしいままにせんとす然れど…

「六月また来り」『干戈永言』

六月また來りみどり萌えさかえつばくらら軒端に孵りさへづれり麥の穗は黃ばみつらなりありなしの風にもふるへおののけりああ中世勇武のみいくさ四方(よも)に戰ひ四方に捷てどもしかれどもあたもまた未だ降らずしきりにはかりごとをめぐらし皇國の四邉に來…

「かの空を見よ」『干戈永言』

かの空を見よかの海を見よそこを戰(いくさ)の場(には)として眼にあまる敵と相擊ち敵をしりぞけ給ひける海の長(おさ)日出づる國の聯合艦隊司令長官海軍大將古賀峯一君つひに機上にたふれ給へりとこの日報あり一度(ひとたび)は山本提督二度(ふたたび…

「大東亜共栄圏の青空は僕らの空」『干戈永言』

大東亞共榮圈の靑空は僕らの空日の丸ひるがへる空日の丸を翼にそめた荒鷲のとびかふ大空何人の侵すをゆるさず何人の汚すをゆるさず大東亞共榮圈靑空は僕らの空 大東亞共榮圈のはてしなき空の隅々敵機ばら百機來らばいざ百機のこさず擊ちて靑空の雲のうへより…

「ゆけ学徒」『干戈永言』

肇國二千六百餘歲國步いま 最も艱難の時にあたれりみ軍は四方(よも)に戰ひ 勝ちがたきいくさに捷てど賊虜また日に旺んに波濤を踐(ふ)み 長風に御しはるかに東西南北より神州の隙(げき)をうかがはんとすそらにみつやまとの國の名にしおふともの逸雄(は…

「夕立のとほりすぎた」『花筐』

夕立のとほりすぎた小徑のほとりの叢でいま鳴きはじめたばかりのきりぎりすしたたるばかり雨にぬれたそこのまつ靑な叢にかくれてそのまつ靑なからだをふるはせをののかせて鳴いてゐるきりぎりすきりぎりす自らのうたに調子づいていつそう心を張りつめへいつ…

「いのちひさしき」『花筐』

いのちひさしき花の木もおとろふる日のなからめやふるきみやこの春の夜にかがり火たきてたたへたる薄墨さくら枝はかれ幹はむしばみ根はくちぬみちのたくみも博士らもせんすべしらに枝を刈り幹をぬりこめたまがきにたて札たてて名にしおふ祇園のさくら枯れん…

「某造船所に於て」『寒柝』

歷史は一の運行にして船舶これを載せ、船舶これを運ぶ。今日鐵塊を擊ち、鐵板を截つて船舶を建造する者、卽ち兄らは兄らの雙手をもて國民の意志を押し切り、祖國の正義をはるかに萬里の外に布く者、まことに手づから今日の歷史を設計し運營し推進する者。兄…

「撃ちてし止まむ」『寒柝』

半宵眠り成りがたくひそかに思ふ萬里の外星かげまれなる夜陰をつらぬき一の艦影幻の如く煤煙遠くふきなびけ舷燈ことごとく滅して疾航(しつかう)し疾航するを――風はやし吹雪まひいでかぐろき怒涛舷側の飛沫聲あるものことごとく叫び吼え聲なき石は緘默(か…

「さくら」『寒柝』

丘のべにさくらは咲きぬ濠ばたにさくらは咲きぬ町びとのつきかふつむじ海とほく見ゆるつつみにげにうらうらとさくらの花はさきいでぬ萬里のほかにゑびすらをうらせたまひてうるそ身はかへりたまはぬ益良男のみたまいまかへりたまひぬしきしまのやまとの國に…

「一握の砂」『寒柝』

松の林のした草ははやうらうらと萌えてしが彌生高潮(やよひたかしほ)鳴るなべに坐りてむすぶ白砂はなほしをゆびにつめたけれつめたき砂をいくたびかわれはむすびつたなぞこにもろき小阜(つかさ)はくづほれぬそがひの山は暮るるとて彼方に赤き雲は燃ゆこ…

「桃の花」『寒柝』

そのこころうらうらとそのすがたたをやかに權(けん)たかききはにはあらぬそのよそひうすくれなゐにつつましきいざ彌生 ひいなまつりのもものはなさすたけのきみらのはなぞげにこのくにのをとめごらこのはなこそは――きのふけふしたてるばかりにさきにほふを…

「寒駅の昼」『寒柝』

あなあたらますら武夫(たけを)がうつし身はゑびすが彈丸(たま)にはじけとびたまひけらしなけふ春の野べをとどろと走りこしひとつらの汽車靖國のみたまをのせて雲雀啼く寒驛の晝しづかなる構舎に入りぬ昨(さく)の夜は警報布(し)きて村人らかたみにた…

「桜花繚乱」『寒柝』

さくらの下に子らあまたつどひて遊べうらうらとさくらの花のさきいづる並木のかげはものなべてほのかににほひ明るみて肌さむき日のうす陽さへわきてなつかしこぞの日のかかる春日はるひもわれはこの水のほとりに古椅子にいこひてものを思ひたり國こぞり讐の…

「寒柝」『寒柝』

星冴え山山か黝くたたずみ聚落じゆらく寂莫として灯火ともしび暗く睡れるに丁鼕ていとうとはるかに馨あり風死し水渇れ何ものの應ふるなきに丁鼕と馨はひとり寒天に起り闃げきたる彼方を步み來る夜深くして睡らざるもの凛烈たる意志聽けそは如何に耳朶にここ…

「青き海見つ」『寒柝』

ひととせははやくめぐりてきのふけふその花にほふをかのべの梅の林をもとほりつ靑き海見つ靑き海見つ寒き梢に的皪てきれきと咲くやこの花はつはつにこのもかのもに蕋しべは黃に天をゆびさし香はかをれほのかなる香のその香よりさらにほのかにひとすぢの煙を…

「起て仏蘭西!」『寒柝』

世に最賤劣の裏切あり世に最酷薄の忘恩あり世に最鐵面皮の破廉恥あり世に何事か忍びて爲さざるなきの意思あり然り 我らそを太陽の下に見る我らそを今日つぶさに眼前に見たり起て佛蘭西!昨は汝の精銳十萬フランダースの野に竭きし時砲聲を彼方に聞きすて三軍…

「梅林小歌」『寒柝』

-相模野乙女に代りてうたへる み軍いくさはみなみにすすみ西東一萬海里天つ日の光ひた射す海原に陸くがに小島に日のみ旗なびかひゆかずしのびつつ初夏の野にほととぎす啼きわたる日にあまさかるひなの乙女がうたうたひいく日か摘めるこれはこれ梅のまろ實ぞ…

「われら銃後の少国民」『寒柝』

ああ天高く地は廣き亞細亞の柱日の本の男の子と生れ大君のやがてみ楯と生ひたちてさきもにほはん櫻花われら銃後の少國民 ああ山靑く水淸きわが日の本は住む人のこころも直ぐひとすぢにみ國をおもひ身をすてしいさをを誰か忘るべきわれら銃後の少國民 ああ風…

「日本の子供」『寒柝』

日本の子供日本の子供世界一幸福な日本の子供世界一重い責任と 世界一高い名譽とをになふ日本の子供正義の戰さにうち勝ち 人道の上に明日の世界をうち建てるもの日本日本の子供世界の地平に輝かしい夜明けをもたらすもの世界に永遠の平和と 希望と 繁榮とを…

「賊風料峭」『寒柝』

昨夜よべ高かりし海の音今宵またかうかうと怒り高鳴りいねがての枕べのものさゆらぎやまず小夜ふけの三更四更なゐふるひ家居いえゐさへ時にわななくああそは人のこころのふかく忍びて怒りに耐へたるに似たるかな敵機昨帝都に入り羶羯せんけつの徒神州の空を…

「師よ 萩原朔太郎」『朝菜集』

幽愁の鬱塊懷疑と厭世との 思索と彷徨とのあなたのあの懷かしい人格はなま溫かい溶岩ラヴアのやうな不思議な音樂そのままの不朽の凝晶體――あああの灰色の誰人の手にも捉へるすべのない影ああ實に あなたはその影のやうに飄々としていつもうらぶれた淋しい裏…