三好達治bot(全文)

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2017-07-15から1日間の記事一覧

「冬の朝」『百たびののち』

鵯どりが叫ぶ霜のきびしい朝の庭木の梢から襤褸(ぼろ)をまとつた利かぬ氣の婆さんお前は近所の街角のけなげな働き手の誰かを私に思はせる鵯どりがけたたましく叫ぶ私はまづ何やら傷ましい感じに眼ざめつつそれに耐へるそそつかし屋のお前がそこらの木實を…

「かの一群のものを見る」『百たびののち』

重たくとざした灰色雲を屋根として彼方に雪の山をおき収穫の後に野にしろき煙たつ枯れ木の梢むらさきに煙はやがて靄となるに影黑き藁塚わづかに靑きものは麥つつましく襟かきあはせ蹲(つく)ばへる聚落(じゆらく)々々を日もすがら黑木の森を驅けめぐるか…

「酩酊」『百たびののち』

水を涉りまた水を涉りわれら綠の野をすぎわれら丘と谷間と山々とを越え國のはて 異國の浦々を舟渡(ふなわた)りぬ茫々と風にふかれ地上を高く飛び去りゆく雲にまぎれ幻の駱駝の瘤にまたがつてある日は陽炎にゆられゆられてさわれらかくいつさいのものから遠…