捷報いたる
捷報いたる
冬まだき空玲瓏と
かげりなき大和島根に
捷報いたる
眞珠灣頭に米艦くつがへり
馬來沖合に英艦覆滅せり
東亞百歲の賊
ああ紅毛碧眼の賤商ら
何ぞ汝らの物慾と恫喝との逞しくして
何ぞ汝らの艨艟の他愛もなく脆弱なるや
而して明日香港落ち
而して明後日フイリッピンは降らん
シンガポールまた次の日に第三の白旗を揭げんとせるなり
ああ東亞百歲の蠹毒
皺だみ腰くぐまれる老賊ら
已にして汝らの巨砲と城塞とのものものしきも
空し
そは汝らが手だれの稼業の
ゆすりかたりを終ひに支えざらんとせるなり
かくて東半球の海の上に
我らの聖理想圏は夜明け
黎明のすずしき微風は動かんとせり
三好達治「捷報臻る」『捷報いたる』(S17.7刊)