「炉辺 四章」『駱駝の瘤にまたがつて』
くれなゐの
くれなゐの花はみな散り
よき友はみなはるかなり
神無月しぐれふる月
こぞの座にわれはまた坐す
いとはやく
いとはやくひと世はすぎぬ
天命を知るはこれのみ
くさびらを林にとると
腰たゆき時雨びとはや
わがうたを
わがうたをののしる人
ものいふがままにまかせつ
にごりざけ窓にくむさへ
ともはなきけふの日ぐらし
又
わがうたをののしる人を
いかにわがうべなふべしや
いなまむもことはしげかり
耳ふたげきかざるまねす
三好達治「爐邊 四章」『駱駝の瘤にまたがつて』(S27.3刊)