三好達治bot(全文)

twitterで運転中の三好達治bot補完用ブログです。bot及びブログについては「三好達治botについて」をご覧ください

「願はくば」『花筐』

願はくばわがおくつきに
植ゑたまへ梨の木幾株(いくしゆ)

 

春はその白き花さき
秋はその甘き實みのる

 

下かげに眠れる人の
あはれなる命はとふな

 

いつよりかわれがひと世の
風流はこの木にまなぶ

 

それさへや人につぐべき
ことわりのなきをあざみぞ

 

いかばかりふかきこころを
つくすともなにかたのまん

 

うたかたのうたはうかべる
雲なればやがてあとなし

 

しかはあれ時世(ときよ)をへつつ
墓の木の影をつくらば

 

人やがて馬をもつなぎ
旅人らここにいこはん

 

後の世をおもひなぐさむ
なかなかにこころはやすし

 

願はくばわがおくつきに
植ゑたまへ梨の木幾株

 

 

三好達治「願はくば」『花筐』(S19.6刊)