「草の上」『測量船』
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野原に出て坐つてゐると、
私はあなたを待つてゐる。
それはさうではないのだが、
たしかな約束でもしたやうに、
私はあなたを待つてゐる。
それはさうではないのだが、
野原に出て坐つてゐると、
私はあなたを待つてゐる。
さうして日影は移るのだが――
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かなかなはどこで啼いてゐる?
林の中で、霧の中で
ダリアは私の腰に
向日葵は肩の上に
お寺で鐘が鳴る。
乞食が通る。
かなかなはどこで啼いてゐる?
あちらの方で、こちらの方で。
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池のほとりの黃昏は
手ぶくろ白きひと時なり
草を藉き
靜かにもまた坐るべし
古き言葉をさぐれども
遠き心は知りがたし
我が身を惜しと思ふべく
人をかなしと言ふ勿れ
三好達治「草の上」『測量船』(S5.12刊)