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三好達治bot(全文)

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「馬鹿の花」『砂の砦』

花の名を馬鹿の花よと
童(わらは)べの問へばこたへし
紫の花
八月の火の砂に咲く
馬鹿の花
馬鹿の花
三里濱三里の砂の丘つづき
この花咲きて
海どりの白きむらがり
古志(こし)の海日すがらここにとどろけり
朱きふどしの蜑の子ら
松の林にあらはれて
わめきさざめき走りゆく
踵(かがと)やくまばゆき砂に
人の子の影のすばやさ
そよやはやかへらぬ時を
三たびまたこの花さきし
日のさかり
帽の鍔ひろきかたむけ
ひとりわが越えゆく丘の起き伏しに
蔓は蜘蛛手にはびこりて
遠きしじまの紫の
花はかろらに息づけり
そよとだに風もふかぬに
その花のみなわななける
手にとらばやがてしをれん
ひななれどもろげなる
心もゆかし
馬鹿の花
馬鹿の花
あはれ知る人なき濱の
八月の
火の砂に咲く
紫の花

 

三好達治「馬鹿の花」『砂の砦』全文