2017-04-22 「旭日旗樹つ」『干戈永言』 『干戈永言』 サイパンは神州の南關旭日旗ここに翩翩と樹つ驕虜ここに蝟集し來り艦砲ここに直射し爆彈ここに雨ふれど旭日旗嚴として硝煙の間に樹つ戰艦咫尺に出没し飛機頭上を覆ひ輕舸走せ戰車驅り來り既にして敵勞われに幾倍勢に傲りて跳梁をほしいままにせんとす然れども旭日旗なほこの關頭を守りて森然として至尊のまけに應へまつりて樹つサイパンは神州の南關今四周みな敵寸土を死守し白兵晝夜を舎かず火砲ことごとく碎けさるともなほ存す腰間の劍劍もまた折れ將兵日に竭(つ)く然れどもなほ塞守の任は盡きず見よなほここに旭日旗燦として高く醜虜の頭上高く飜り樹つ! 三好達治「旭日旗樹つ」『干戈永言』(S20.6刊)