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三好達治bot(全文)

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「いのちひさしき」『花筐』

いのちひさしき花の木も
おとろふる日のなからめや
ふるきみやこの春の夜に
かがり火たきてたたへたる
薄墨さくら枝はかれ
幹はむしばみ根はくちぬ
みちのたくみも博士らも
せんすべしらに
枝を刈り幹をぬりこめ
たまがきにたて札たてて
名にしおふ祇園のさくら枯れんとす
いたはりたまへ
たちよりて根かたの土を踏まゆなと
命じたまへり
あな無慙祇園のさくら枯れんとす
みるかげもなくうらぶれし
けふのすがたのあはれさへ
時の間とこそなりけらし
ああこのさくら朽ちはてて
名のみはのこれむなしくも
あとなくならば花の木の
むかしの友のわれらまた
みやこに車おりたたし
春のゆくへを訪はなとて
西にはむかへ東には
杖はひくまじ
あるじなき祇園丸山
夜ざくらのかがり火むなし
二つなき花は伐られてくだかれて
影もほろびし春の夜の
夢のあとどを訪ふにたへめや

ひのもとのいちとたたへし
はなのきをかるるにまかす
せんすべしらに

 

「いのちひさしき」『花筐』全文