2017-04-20 「さくら」『寒柝』 『寒柝』 丘のべにさくらは咲きぬ濠ばたにさくらは咲きぬ町びとのつきかふつむじ海とほく見ゆるつつみにげにうらうらとさくらの花はさきいでぬ萬里のほかにゑびすらをうらせたまひてうるそ身はかへりたまはぬ益良男のみたまいまかへりたまひぬしきしまのやまとの國にうらうらとさくらの咲く日――わか草のもゆるつちふみひなぐもる空をあふぎて行くひとはころものそでもかろらかにこころはあがれしめやかにいま春の喪のひかりをあびてあゆむなり 三好達治「さくら」『寒柝』(S18.12刊)