「一握の砂」『寒柝』
松の林のした草は
はやうらうらと萌えてしが
彌生高潮(やよひたかしほ)鳴るなべに
坐りてむすぶ白砂は
なほしをゆびにつめたけれ
つめたき砂をいくたびか
われはむすびつたなぞこに
もろき小阜(つかさ)はくづほれぬ
そがひの山は暮るるとて
彼方に赤き雲は燃ゆ
この海山を二つなき
家よとたのみ生ひたらし
身をこそをしめ春まだき
つめたき砂をむすびつつ――
三好達治「一握の砂」『寒柝』(S18.12刊)
松の林のした草は
はやうらうらと萌えてしが
彌生高潮(やよひたかしほ)鳴るなべに
坐りてむすぶ白砂は
なほしをゆびにつめたけれ
つめたき砂をいくたびか
われはむすびつたなぞこに
もろき小阜(つかさ)はくづほれぬ
そがひの山は暮るるとて
彼方に赤き雲は燃ゆ
この海山を二つなき
家よとたのみ生ひたらし
身をこそをしめ春まだき
つめたき砂をむすびつつ――
三好達治「一握の砂」『寒柝』(S18.12刊)