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三好達治bot(全文)

bot及びブログについては初めにこちらをご覧ください http://miyosibot.hatenablog.com/entry/2017/03/28/110448

「寒驛の晝」『寒柝』

『寒柝』

 

あなあたらますら武夫(たけを)が
うつし身はゑびすが彈丸(たま)に
はじけとびたまひけらしな
けふ春の野べをとどろと
走りこしひとつらの汽車
靖國のみたまをのせて
雲雀啼く寒驛の晝
しづかなる構舎に入りぬ
昨(さく)の夜は警報布(し)きて
村人らかたみにたすけ
ゆるびなき備へにつきし
夜をひと夜あくるをまたで
おほけなきまけのまにまに
いでたたす子らをおくると
しののめの車の窓に
萬歲を叫びしこゑの
なほ耳にのこるうまやに
このたびはみたまをむかふ
げに兵馬倥傯の日や
敵機ばら北に南に
さばへなし隙(げき)をうかがふ
神州の空はかすみて
かぎろひの春のけしきと
なりにたれいましめとくな
からき眼を百度(ひゃくたび)みるも
こりずまに來らん敵ぞ
かりそめにこころゆるして
千載(せんざい)の悔いなのこしそ――
かくのらしたまふらんかし
靖國のみたまはかしこ
神なれば言(こと)はなけれど


「寒驛の晝」『寒柝』全文