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三好達治bot(全文)

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「灰色の鷗」『一點鐘』

彼らいづこより來しやを知らず
彼らまたいづこへ去るやを知らない

 

かの灰色の鷗らも
我らと異る仲間ではない

 

いま五月の空はかくも靑く
いま日まわりの花は高く垣根に咲きいでた

 

東してここに來る船あり

西して遠く去る船あり

 

いとけなき息子は沙上にはかなき城を築き
父はこなたの陽炎に坐してものを思へり

 

漁撈の網はとほく干され
貨物列車は岬の鼻をめぐり走れり

 

ああ五月の空はかくも靑く

はた海は空よりもさらに靑くたたへたり

 

しかしてああ いぢらしきこれら生あるものの上に
かの海風は 鰯雲は高く來るかな……

 

しかしてああ げにわれらの運命も
かの高きより來るかな……

 

されば彼ら 日もすがらかしこに彼らの圓を描き

されば彼ら 日もすがら彼らの謎を美しくせんとす

彼らいづこより來しやを知らず
彼らまたいづこへ去るやを知らない

かの灰色の鷗らも
我らと異る仲間ではない

 

「灰色の鷗」『一點鐘』全文