とある朝 一つの花の花心から
昨夜の雨がこぼれるほど
小さきもの
小さきものよ
お前の眼から お前の睫毛の間から
この朝 お前の小さな悲しみから
父の手に
こぼれて落ちる
今この父の手の上に しばしの間暖かい
ああこれは これは何か
それは父の手を濡らし
それは父の心を濡らす
それは遠い國からの
それは遠い海からの
それはこのあはれな父の その父の
そのまた父の まぼろしの故鄕からの
鳥と歌と 花の匂ひと 靑空と
はるかにつづいた山川との
——風のたより
なつかしい季節のたより
この朝 この父の手に
新らしくとどいた消息