三好達治bot(全文)

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「庭」『測量船』

ゑんじゆの蔭の敎へられた場所へ、私は草の上からぐさりと鶴嘴をたたきこんだ。それから、五分もすると、たやすく私は掘りあてた、私は土まみれの髑髏を掘り出したのである。私は池へ行つてそれを洗つた。私の不注意からできた顳顬の上の疵を、さつきの鶴嘴の手應へを私は後悔してゐた。部屋に歸つて、私はそれをベッドの下に置いた。

 

 午後、私は雉を射ちに谿へ行つた。還つて見ると、ベッドの脚に水が流れてゐた。私のとりあげた重い玩具の、まだ濡れてゐる眼窩や顳顬の疵に、小さな赤蟻がいそがしく見え隱れしてゐる、それは淡い褐色の、不思議に優雅な城のやうであつた。

 

 母から手紙が來た。私はそれに返事を書いた。

 

 

三好達治「庭」『測量船』(S5.12刊)