「庭」『測量船』
午後、私は雉を射ちに谿へ行つた。還つて見ると、ベッドの脚に水が流れてゐた。私のとりあげた重い玩具の、まだ濡れてゐる眼窩や顳顬の疵に、小さな赤蟻がいそがしく見え隱れしてゐる、それは淡い褐色の、不思議に優雅な城のやうであつた。
母から手紙が來た。私はそれに返事を書いた。
三好達治「庭」『測量船』(S5.12刊)
午後、私は雉を射ちに谿へ行つた。還つて見ると、ベッドの脚に水が流れてゐた。私のとりあげた重い玩具の、まだ濡れてゐる眼窩や顳顬の疵に、小さな赤蟻がいそがしく見え隱れしてゐる、それは淡い褐色の、不思議に優雅な城のやうであつた。
母から手紙が來た。私はそれに返事を書いた。
三好達治「庭」『測量船』(S5.12刊)