『百たびののち』以後
風の波 風の色 風の足音その一陣 一陣……………羊の群れを逐(お)ふてゆく それも旅人逐ふ人も 背(うし)ろの風に逐はれてゆく……………穢土寂光(ゑどじやくくわう)は 冬の日に風の來て掃(は)いて淸めた庭だらうゆつくりとした步(あし)どりで影のない羊の群…
黑くすすけた蘆(あし)の穗に冬の水が光つている冬の川が流れている霞のおくに煤けて落ちる夕陽にむかつて川蒸汽が遠く歸つてゆく昨日の曳船を解き放つてひとりぽつちの川蒸汽が帰ってゆく身輕になつた 船脚で――古い記憶だ 噫かのなつかしい人格地上の友 地…