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三好達治bot(全文)

bot及びブログについては初めにこちらをご覧ください http://miyosibot.hatenablog.com/entry/2017/03/28/110448

「蝙蝠と少年」『測量船拾遺』

少年よ、父母がお前を見喪つたのか、または、お前が父母を見喪つたのか――。 靴の踵で古めかしく磨り減らされてゐる、海岸近い居留地の鋪道の上で、私はその夜支那人の一人の少年を拾つた。狭い額につり上つた眉をもち、皮膚に靑い脂肪の沈澱したこの少年は、…

「岬の話」『測量船拾遺』

(敵の艦隊、芭蕉の葉のやうな浪をかきわけ、大きく印度洋を迂廻してゐる。)一人の兵士が一頭の羊を、一頭の羊が一人の兵士を愛した。兵士の群が羊の群を、羊の群が兵士の群を愛した。彼等は日曜日の日向で、華やかにも慇懃に、綠の制服と白い毛並とを入り…

「暗い城のやうな家」『測量船拾遺』

私は暗い城のやうな家の門に立つてほとほとと扉を敲いてゐる。 ――この扉をあけて下さい。私を通して下さい。どうぞそつと私をこの中へ入れて下さい。 すると中からしづかな聲が答へる。 ――お前はそもそも何ものだ? もう今夜の人々はみんな入つてしまつた筈…

「昨日はどこにもありません」『測量船拾遺』

昨日はどこにもありませんあちらの箪笥の抽出しにもこちらの机の抽出しにも昨日はどこにもありません それは昨日の寫真でせうかそこにあなたの立つてゐるそこにあなたの笑つてゐるそれは昨日の寫真でせうか いいえ昨日はありません今日を打つのは今日の時計…