三好達治bot(全文)

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2017-07-29から1日間の記事一覧

「玫瑰の花」『百たびののち』

冬の夜の二時三時 こんな夜ふけ 會ひたくなつたよ潮かほる 北の濱べの 砂山の かの玫瑰(はまなす)の花二晩三晩 今晩もまた爐に近く乙女らが來て匂ふやうだなにやら惱ましい思ひのやうだ君らはあまり遠すぎるまつ暗闇の月の出の 吹雪を思ふ 怒濤を思ふこの…

「庭すずめ七」『百たびののち』

例年の例のとほりに冬に入るとまた雀らが歸つてくる柿の木の高いところに しばらく見失つてゐた數だけ集つてゐる柿の木は裸で 彼らはすつきり恰幅がよくなつて見える艶やかに磨きがかかつて 落ちつき拂つて見えるあのおしやべり屋がだまつてゐる冬の日は暖か…

「朝なりき」『百たびののち』

朝なりき靑木の蔭に胸の和毛(にこげ)を雙の羽(は)をかいつくろふと小鶲(こびたき)の陽は木洩れ陽の破(や)れ壁に巷(ちまた)のこゑは遠く絶え ふとも微かにともよすに――小雨鶲(こさめびたき)のかくれ栖(す)む金と綠を身づくろふ華奢(かさ)なる…

「茶鼎角」『百たびののち』

くろがねなればたのもしくそのこゑさやかさやさやと夜もすがら鳴るを友とすことあげ多しわが友ら善しを善し惡しを惡ししと憂ひいふ世のさまなれどある時は束(つか)ね忘れて我は倚(よ)るやつれ釜古志(こし)の蘆屋(あしや)にうつら聽く遠き潮騷――嶺の…