2017-07-07から1日間の記事一覧
この日蕭々として黃梅の雨ふる日、我がどち君の歸鄕を待つ。歸る人は然れども旣に白玉樓中の客にして、遺影空しく待ちえて何を語らはんすべもなし。信濃なる淺間ヶ岳にたつ煙ただほのぼのとして半霄に遠きを見るに似たらんかしこの情や。しかしてげに遙かに…
空をさまよふ星だから小さい醜い星だから 星にたたへた海だから海に浮んだ陸だから 陸のこぼれた島だから島でそだつた猿だから お臀の鬼斑(あざ)は消しがたい何しろさういふわけだから チャリンコパチンコネオン燈ビンゴの玉はセルロイド パンパン孃の赤い…
橋の袂のチャルメラは屋臺車の支那蕎麥屋陶々亭の名もかなし要するにこれわんたんをくらわんかいの一ふしは客がないから吹く笛だ宵の九時から吹きそめて氣輕に吹けば音も輕く當座はややに花やげる親爺が茶利で君が代は千代に八千代にと吹きならす遠いえびす…
あの頃は空が低かつた肩が星につつかへた文なしで宿なしで彼は港をほつついた靴の踵(かかと)をひんまげて蟬のつぎはきりぎりすそれからつぎはこほろぎだ秋がきて霜がふりやさしい奴らはかくして死ぬさうして世間は靜かになり婆々あが砧をうつことだ我慢を…