三好達治bot(全文)

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2017-05-13から1日間の記事一覧

「砂の砦」『砂の砦』

私のうたは砂の砦だ海が來てやさしい波の一打ちでくづしてしまふ 私のうたは砂の砦だ海が來てやさしい波の一打ちでくづしてしまふ こりずまにそれでもまた私は築く私は築く私のうたは砂の砦だ 無限の海にむかつて築くこの砦は崩れ易いもとより崩れ易い砦だ …

「赤き落日にむかひて」『砂の砦』

赤き落日にむかひてわれは路なき砂をくだりひとり砂丘を越えてゆく遠き日ごろもかかりしに人の世のげにけながくも暮れてゆくかかる身空やよしや頰(ほ)の風にむかひて熱き日もいまははや泪おちず冬の日の雲は彼方にみな低く沈みあつまりこごりたり淡々し 消…

「竹の靑さ」『砂の砦』

竹の靑さは身に透る竹の靑さよ骨にも透るああ竹竹靑く煙つた大竹藪に鳩が一羽舞ひたつた夢のやうに羽音もなく靑い煙にかすんで飛んだそのあとをまた一羽はたはたと斜に空へ拔け去つた日暮れどきの竹藪は靜かな海の底のやうだかうして私は爪先のぼりに丘の小…

「淚をぬぐつて働かう」『砂の砦』

——丙戊歲首に みんなで希望をとりもどして淚をぬぐつて働かう忘れがたい悲しみは忘れがたいままにしておかう苦しい心は苦しいままにけれどもその心を今日は一たび寛がうみんなで元氣をとりもどして淚をぬぐつて働かう 最も惡い運命の颱風の眼は過ぎ去つた最…

「氷の季節」『砂の砦』

今は苦しい時だ今はもつとも苦しい時だ長い激しい戰さのあとで四方の兵はみな敗れ家は燒け船は沈み山林も田野も蕪れてこの窮乏の時を迎へる七千萬のわれわれは一人一人に無量の悲痛を懷いてゐる怒りや失意や絕望やとりかへしのつかない悲しい別離や痛ましい…

「橫笛」『故鄕の花』

幼き子らが月日ごろなにの愁ひをくれなゐの唇(くち)もきよらにつれづれと吹きならひけんいまほのぐらきものかげのかばかり塵にうづもれてふしまろびたる橫笛昨日子らは晴衣きて南のかたに旅だちぬ――かくはえうなく忘られて朱(あけ)もふりたる歌口をあり…

「海邊暮唱」『故鄕の花』

彼方に大いなる船見ゆ敵國の船見ゆいえいえあれは雲です彼方に靑き島見ゆ島二つ見ゆいえいえあれは雲です ひと日暮れんとして悲しみ疲れたるわれらが心の上にいま大いなる蓋(きぬがさ) 夕燒の空は赤く燃えてかかりたり深き憂愁と激しき勞役との一日(いち…