三好達治bot(全文)

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2017-05-12から1日間の記事一覧

「帰らぬ日遠い昔」『故郷の花』

歸らぬ日遠い昔歸らぬ日遠い昔(聽くがいい そらまた夜の遠くで木深い遠くの方で鐘がなる)遠い昔だ何も彼も雁(がん)も鳩も木兎もみんな行方(ゆきがた)しれずだよあの子もどこでどうしたやらつり眼狐の晝行燈病身のいつも無口な子だつたが靑い顏していぢ…

「池のほとりに柿の木あり」『故郷の花』

池のほとりに柿の木あり幹かたむきて水ふりし堤のうへをゆきかよふ路もなつかし艸靑き小徑の彼方松高く築地は低き學び舍(や)にわれは年ごろ何ごとを學びたりけん今は記(おぼ)えずなべては時の死の箒(ははき)ははき消しゆくをちかたのあとなきにただそ…

「島崎藤村先生の新墓に詣づ」『故郷の花』

しづかなる秋の朝なり鵯どりら空によびかひ林より林にわたるしづかなる秋の朝なり百舌はまたさらに高音を張りて啼け世はひそかなりこよろぎの濱のおほ波ゆるやかにくづるるさへやここにして聽けばかそけしこの庭にいま陽ざしおつ斑々(はんはん)とかくはさ…

「さくらしま山」『故郷の花』

いるかとぶ春の海原しぐれふりやがてかくろふさくらしま山 九天ゆ直下す三機あなさやけさくらしま山雲のかげ見ゆ いくさある海のはてよりかへりこしいくさぶねはつさくらしま山 ○ ふたくさのこほろぎのこゑおこるなり庭の畑に日のてるしづか 海靑し小松林の…

「時雨の宿」『故郷の花』

かすかなるかすかなる聲はすぐはらはらと今ふりいでし雨の音ひそかに軒を走る夜時雨ふるかかる夜頃を音もひくく渡るは何の鳥ならんかすかなるかすかなる聲はすぐ 聲はかたみに呼びかはしちちとのみただひくくかすかにかたみにつまをたのむらんこたへかわして…