三好達治bot(全文)

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2017-05-06から1日間の記事一覧

「涕涙行」『干戈永言』

……………………敵壘下咫尺の壕に肉薄し夜を徹したり拂曉に突撃せんとす……かかる時四もは寂寞星しげき阜(つかさ)のかげに君が書を讀む兵ありと君やよし詩人(うたびと)の想(そう)に富ますも得ておもひ知りたまふまじ君が書はわが行嚢(かうなう)に門出の日負…

「蒼穹賦」『干戈永言』

八月二十日敵機九州北邉を侵す、わが邀擊機中敵機と高空に相衝擊して玉碎するもの三、操縦者山田野邉高木みな紅顔の靑年のみ、感に耐へず一詩を賦す。 嗚呼父の國母の國わが大君のしろしめす日の本の空この大空に戰ひて死ぬをほまれと靑雲のたたなはる上日一…

「リラの花匂ふ朝鮮」『干戈永言』

リラの花匂ふ朝鮮ポプラの並木高くはるかに灰色の鶴黃昏の川水にたたずむ朝鮮白衣の人彼方を步み艸靑く古墳のつかさつかさを覆へる丘べ松の根方に黃なる牛繫ぎ放たれてわがゆく小徑をさまたげし旅の思出古陵癈寺斷礎龜跌城あとに蒲公英咲き鵲はきみしき電柱…

「窗下の海」『干戈永言』

一 北海波黑く冰霰屡到る客愁また暗澹として何事か呼ばんと欲し更にまた緘默す嗚呼人(ひと)生を必せず死を必するの時白鷗烈風に啼く人事他なしただ心機一瞬を尚ぶべし 二 心機ただ一瞬を尚ぶべしたまたま我は家鄕をすて北海の濱に流寓す骨枯れ肉はたゆけれ…

「まつ青な五月の空だ」『干戈永言』

まつ靑な五月の空だまつ靑な五月の海だ南へ南へ ぽつかり浮かんだ雲がいくつ しづかに南へ流れていくその下で海豚(いるか)のむれが踊つてゐる僕らはみんな砂濱にでて胸を張つて遠くを眺めた僕らは南の方の遠い水平線をみつめてゐた僕らはなにか大きな聲で…