三好達治bot(全文)

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2017-04-08から1日間の記事一覧

「落下傘部隊!」『捷報いたる』

落下傘部隊!落下傘部隊!見よこの日忽然として碧落へきらく 彼らの頭上に破れ神州の精鋭隨處に彼らの陣頭に下る落下傘部隊!落下傘部隊!こはこれ大東亞聖理想圈の尖兵十百千萬爆彈と銃劒と旺んなる喊聲とをもて見よ今白雲の間に雨ふり下るはこはこれ大東亞…

「ジョンブル家老差配ウインストン・チャーチル氏への私言」『捷報いたる』

このたびはシンガポール失陷さぞかし御落膽御痛心のこととお氣の毒に存候先日のレパルスウェルズ二艦も存外の沈歿にてまた香港などもあのやうなる御始末これらを時世ときよ とも申すものにや日頃の御細心にも似合はぬ算盤ちがひわづかのひまにうちつづく御不…

「新嘉坡落つ」『捷報いたる』

一たびかしこに仆れしユニオン・ジャック二たびここに仆れたり一たびかしこに揚げられし白旗二たびここに揚げらる香港落ち新嘉坡落つ神州の貔貅神速老醜賊を追い擊ちて 北より南し千里の密林を一掃して 堅壘日に落つああ而して昨の奸黠どもが相稱へて萬世不…

「昨夜香港落つ」『捷報いたる』

昨夜香港落つ主基督降誕祭日黃昏かしこビクトリア・ピーク山寨上に翩翩と彼らの白旗はひるがへれり!もと彼らの漂海の賤賈東亞一百歲の蠹賊魔󠄁藥阿片の押賣行商どもがあまつさへ强請ゆすり取り騙かたり取りたる香港――かしこ香港島上に東海の猛鷲飛びかひ巨彈…

「アメリカ太平洋艦隊は全滅せり」『捷報いたる』

ああその恫喝ああその示威ああその經濟封鎖ああそのABCD線笑ふべし 脂肪過多デモクラシー大統領が飴よりもなお甘かりけん 昨夜さくや の魂膽のことごとくはアメリカ太平洋艦隊は全滅せり!荒天萬里の外激浪天を拍つの間に馳驅すべかりしああその凡庸提督…

「捷報臻る」『捷報いたる』

捷報いたる捷報いたる冬まだき空玲瓏とかげりなき大和島根に捷報いたる眞珠灣頭に米艦くつがへり馬來沖合に英艦覆滅せり東亞百歲の賊ああ紅毛碧眼の賤商ら何ぞ汝らの物慾と恫喝との逞しくして何ぞ汝らの艨艟の他愛もなく脆弱なるや而して明日香港落ち而して…

「灰色の鷗」『一點鐘』

彼らいづこより來しやを知らず彼らまたいづこへ去るやを知らない かの灰色の鷗らも我らと異る仲間ではない いま五月の空はかくも靑くいま日まわりの花は高く垣根に咲きいでた 東してここに來る船あり西して遠く去る船あり いとけなき息子は沙上にはかなき城…

「毀れた窓」『一點鐘』

廢屋のこはれた窓から五月の海が見えてゐる 硝子のない硝子戸越しにそいつが素的なまつ晝間だ 波は一日ながれてゐるその額緣にポンポン船がやつてくる 灰色の鷗もそこに集つて何かしばらく解けない謎を解いてゐる ぽつかり一つそんな時鯨がそこに浮いたつて…

「いつしかにひさしわが旅」『一點鐘』

たまくしげ凾根の山のこなたなる足柄の山 をさなき日うたにうたひしその山のふもとの出湯でゆに ゆくりなくわが來たり臥ふす春の日をいく日ひへにけむ 朝な朝さななくきぎすはもけたたまし谷をとよもし はたたくや木もれ陽のうち つと見ればつまを率ゐてかの…

「鷗どり」『一點鐘』

ああかの烈風のふきすさぶ砂丘の空にとぶ鷗沖べをわたる船もないさみしい浦のこの砂濱にとぶ鷗(かつて私も彼らのやうなものであつた) かぐろい波の起き伏しするああこのさみしい國のはて季節にはやい烈風にもまれもまれて何をもとめてとぶ鷗(かつて私も彼…

「一點鐘二點鐘」『一點鐘』

靜かだつた靜かな夜だつた時折りにはかに風が吹いたその風は そのまま遠くへ吹きすぎた一二瞬の後 いつそう靜かになつたさうして夜が更けたそんな小さな旋じ風も その後谿間を走らない…… 一時が鳴つた二時が鳴つた一世紀の半ばを生きた 顏の黃ばんだ老人の …

「かつてわが悲しみは」『艸千里拾遺』

かつてわが悲しみは かの丘のほとりにいこへりかつてわが悲しみは かの丘のほとりにいこへり 五月またみどりはふかく 見よかなたに白き鳥のとぶあり おのが身ははやく老いしかこの日また家にいそぐや あてどなき旅のひと日の夕暮れの汽車のまどべに かの丘に…

「老いらくの身をはるばると」『艸千里拾遺』

老いらくの身をはるばるとこのあしたわがふるさとゆははそはの母はきたまふ おんくるまうまやにつかせたまふにはいとまありけりわれひとりなぎさにいでて 冬の日のほのかほのかにあたたかき濱のおほなみひるがへる見つつたのしも 眞鶴の崎の巖が根大島のはる…

「日まはり」『艸千里拾遺』

橋の袂の日まはり床屋の裏の日まはり水車小屋の日まはり交番の陰の日まはり頽れた築地の上に聳えた路ばたの墓地の日まはり丘の上の洒落た一つ家そのまた上の 女學校の 寄宿舎の庭の日まはりああ日まはり日まはりそれは旺んな季節の洪水七月 この海邊の町を不…

「海よ」『艸千里拾遺』

門を閉ぢよ 心を開け……それで私は 表を閉めて裏の垣根を越えてきた蜜柑畠の間を拔けて海よ お前の渚にかうして私は一人できたああ陽炎のもえる初夏の小徑眩めくるめく砂の上で海よ 私は何を考へよう 思出のやうにうすぐもつて藍鼠色あゐねずいろにぼんやりし…